第7回アカデミー賞(1935年)

会場:ビルトモア・ホテル
司会:アーヴィング・S・コッブ

1935年、ビルトモア・ホテル。第7回アカデミー賞授賞式は、映画産業の成熟を象徴する祝典となった。この年、映画芸術は新たな高みに到達し、後世に語り継がれる傑作が数多く誕生した。

作品賞を制したのは、フランク・キャプラ監督、クラーク・ゲーブル、クローデット・コルベールという豪華キャストが織りなすロマンティック・コメディ『或る夜の出来事』。身分違いの恋、意地悪だが憎めないヒロイン、そして予想外の結末。この作品は、ロマンティック・コメディの金字塔を打ち立て、その影響は現代映画にも色濃く残っている。キャプラの巧みな演出、ゲーブルのカリスマ性、コルベールの可憐な演技が三位一体となり、映画史に燦然と輝くマスターピースとなった。監督賞もまた、『或る夜の出来事』のキャプラが受賞。前年の『一日だけの淑女』に続き、2年連続の栄冠を手にした。彼の作品は、ユーモアとペーソス、そして人間味あふれる登場人物たちが織りなす物語が特徴で、観る者の心を深く揺さぶる。キャプラは、その後も『スミス都へ行く』、『素晴らしき哉、人生!』などの名作を世に送り出し、ハリウッド黄金期を代表する巨匠としての地位を確立した。

主演男優賞は、『或る夜の出来事』のクラーク・ゲーブルが受賞。その圧倒的な存在感は、瞬く間に彼をハリウッドの頂点へと押し上げた。彼は、後に『風と共に去りぬ』のレット・バトラー役でさらにその人気を不動のものとし、“キング・オブ・ハリウッド”の称号を得ることになる。

主演女優賞もまた、『或る夜の出来事』のクローデッド・コルベールが受賞。チャーミングな演技と洗練された美貌は、観客を魅了してやまなかった。彼女は、その後も数々の作品で活躍し、ハリウッドを代表する女優としての地位を確固たるものにした。

第7回アカデミー賞では、新たに助演男優賞と助演女優賞が設立された。助演男優賞は、『白い蘭』のフランク・モーガンが、助演女優賞は、『模倣の人生』のアリソン・スキップワースが受賞。これらの賞の新設は、映画における演技の重要性を再認識させ、俳優たちのさらなる飛躍を促す契機となった。

作曲賞は『One Night of Love』、歌曲賞は『コンチネンタル』の主題歌「The Continental」、編集賞は『エスキモー』が受賞。ノミネート作品には、『クレオパトラ』、『お姫様大行進』、『これがアメリカ艦隊』、『ロスチャイルド』、『模倣の人生』など、多様なジャンルの作品が名を連ね、映画界の活況を如実に示した。

第7回アカデミー賞は、ハリウッド黄金時代の到来を告げる祝典となった。映画産業が技術的にも芸術的にも成熟期を迎え、数々の名作が生まれたこの年は、映画史における重要な転換点となった。また、助演男優賞、助演女優賞などの新設は、映画芸術の多様性を認め、その発展を後押しする重要な一歩となった。

『或る夜の出来事』の主要4部門独占は、ロマンティック・コメディというジャンルを確立し、その後の映画界に計り知れない影響を与えた。キャプラ、ゲーブル、コルベールといった才能が、映画芸術の可能性を大きく広げ、観客に忘れがたい夢と感動を与えたのだ。

第7回アカデミー賞は、映画が単なる娯楽を超え、芸術として認められるようになった時代の象徴と言える。この祝典は、映画史に燦然と輝く金字塔として、その輝きは現代まで決して色褪せることはない。

作品賞

◎『或る夜の出来事』
『白い蘭』
『クレオパトラ』
『お姫様大行進』
『コンチネンタル』
『これがアメリカ艦隊』
『ロスチャイルド』
『模倣の人生』
『恋の一夜』
『影なき男』
『奇傑パンチョ』
『ホワイト・パレード』

監督賞

◎フランク・キャプラ -『或る夜の出来事』
ヴィクター・シャーツィンガー -『恋の一夜』
W・S・ヴァン・ダイク -『影なき男』

主演男優賞

◎クラーク・ゲーブル -『或る夜の出来事』
フランク・モーガン -『The Affairs of Cellini』
ウィリアム・パウエル -『影なき男』

主演女優賞

◎クローデット・コルベール -『或る夜の出来事』
グレース・ムーア -『恋の一夜』
ノーマ・シアラー -『白い蘭』

原案賞

◎アーサー・シーザー -『男の世界』
マウリ・グラッシン -『愛の隠れ家』
ノーマン・クラスナー -『世界一の金持娘』

脚色賞

◎ロバート・リスキン -『或る夜の出来事』
フランセス・グッドリッチ、アルバート・ハケット -『影なき男』
ベン・ヘクト -『奇傑パンチョ』

短編映画賞(コメディ)

◎『クカラチャ』– パイオニア・ピクチャーズ
『Men in Black』– ジュール・ホワイト
『What, No Men!』– ワーナー・ブラザース

短編映画賞(ノベルティ)

◎『City of Wax』– スキボ・プロダクションズ
『Bosom Friends』– スキボ・プロダクションズ
『Strikes and Spares』– ピート・スミス

短編アニメ賞

◎『The Tortoise and the Hare』– ウォルト・ディズニー
『Holiday Land』– チャールズ・ミンツ
『Jolly Little Elves』– ウォルター・ランツ

美術監督賞

◎セドリック・ギボンズ、フレデリック・ホープ -『メリィ・ウィドウ』
リチャード・デイ -『The Affairs of Cellini』
ヴァン・ネスト・ポルグラス、キャロル・クラーク -『コンチネンタル』

作曲賞

◎ヴィクター・シャーツィンガー -『恋の一夜』
マックス・スタイナー -『コンチネンタル』
マックス・スタイナー -『肉弾鬼中隊』

歌曲賞

◎「The Continental(『コンチネンタル』)」- コン・コンラッド(作曲)、ハーブ・マジッドソン(作詞)
「Carioca(『空中レヴュー時代』)」- ヴィンセント・ユーマンス(作曲)、エドワード・エリシュー(作詞)、ガス・カーン(作詞)
「Love in Bloom(『彼女は僕を愛さない』)」- ラルフ・レインジャー(作曲)、レオ・ロビン(作詞)

撮影賞

◎ヴィクター・ミルナー -『クレオパトラ』
ジョージ・フォルシー -『砲煙と薔薇』
チャールズ・ロッシャー -『The Affairs of Cellini』

助監督賞

◎ジョン・S・ウォーターズ -『奇傑パンチョ』
スコット・ビール -『模倣の人生』
カレン・テート -『クレオパトラ』

録音賞

◎コロンビア・スタジオ・サウンド部 -『恋の一夜』
20世紀フォックス・スタジオ・サウンド部 -『ホワイト・パレード』
MGMサウンド部 -『奇傑パンチョ』
パラマウント・スタジオ・サウンド部 -『クレオパトラ』
RKOサウンド部 -『コンチネンタル』
ユナイテッド・アーティスツ・サウンド部 -『The Affairs of Cellini』
ユニバーサル・スタジオ・サウンド部 -『模倣の人生』
ワーナー・ブラザース・サウンド部 -『お姫様大行進』

編集賞

◎コンラッド・A・ネルヴィッヒ -『エスキモー』
アン・ボーチェンズ -『クレオパトラ』
ジーン・ミルフォード -『恋の一夜』

特別賞

シャーリー・テンプル

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