会場:アンバサダーホテル
司会:ウィル・ロジャース
1934年3月16日、ハリウッドのアンバサダーホテルで第6回アカデミー賞授賞式が開催された。世界恐慌の嵐が吹き荒れる中、映画は人々に夢と希望を与え、ハリウッドは黄金時代を迎えていた。この年のアカデミー賞は、そんな時代を反映した作品とスターたちによって彩られたのだ。
作品賞に輝いたのは、イギリス映画『キャヴァルケード』。フランク・ロイド監督が手掛けたこの作品は、第一次世界大戦前後におけるイギリスの一家を描いた大河ドラマだ。戦争の悲劇、社会の変化、家族の絆といった普遍的なテーマを描き、世界恐慌下の観客に感動と勇気を与えた。監督賞も同作でフランク・ロイドが受賞。壮大なスケールで歴史と人間ドラマを織り交ぜ、観客を物語の世界に引き込む手腕が高く評価された。本作は、彼の代表作として映画史に燦然と輝いている。
主演男優賞は、イギリスの俳優チャールズ・ロートンが『ヘンリー八世の私生活』で受賞。イングランド王ヘンリー8世の複雑な内面を巧みに表現し、その演技力は絶賛を浴びた。本作をきっかけに、ロートンはハリウッドでの地位を不動のものにした。
主演女優賞は、キャサリン・ヘプバーンが『勝利の朝』で受賞。自立心旺盛な女性を演じ、その新鮮な魅力で観客を魅了した。本作は、彼女がハリウッドを代表する女優としての道を歩み始めるきっかけとなった。
第6回アカデミー賞では、助演男優賞と助演女優賞はまだ設けられていなかった。これらの賞が設置されるのは、翌年の第7回からである。
その他の注目作品としては、『若草物語』(脚色賞)、『一日だけの淑女』(原作賞)、『別れの歌』(撮影賞・録音賞)などが挙げられる。美術賞は『キャヴァルケード』が受賞した。これらの作品や受賞者は、当時のハリウッド映画界における多様な才能と創造性を示している。
第6回アカデミー賞は、世界恐慌という困難な時代の中でも、映画が人々に与える力と影響を改めて示す場となった。受賞作品や俳優たちは、映画が単なる娯楽を超えて、人間の心を動かし、社会に影響を与える存在であることを証明したのだ。
映画史における重要な転換期を記録しただけでなく、映画が持つ普遍的な価値と可能性を示す貴重な機会となった、第6回アカデミー賞。受賞作品や俳優たちは映画史に大きな足跡を残し、その功績は現代の映画界にも脈々と受け継がれている。
作品賞
◎『大帝国行進曲』
『四十二番街』
『戦場よさらば』
『仮面の米国』
『一日だけの淑女』
『若草物語』
『ヘンリー八世の私生活』
『わたしは別よ』
『永遠に微笑む』
『あめりか祭』
監督賞
◎フランク・ロイド –『大帝国行進曲』
フランク・キャプラ –『一日だけの淑女』
ジョージ・キューカー –『若草物語』
主演男優賞
◎チャールズ・ロートン –『ヘンリー八世の私生活』
レスリー・ハワード –『Berkeley Square』
ポール・ムニ –『仮面の米国』
主演女優賞
◎キャサリン・ヘプバーン –『勝利の朝』
メイ・ロブソン –『一日だけの淑女』
ダイアナ・ウィンヤード –『大帝国行進曲』
原案賞
◎ロバート・ロード –『限りなき旅』
フランセス・マリオン –『世界拳闘王』
チャールズ・マッカーサー –『Rasputin and the Empress』
脚色賞
◎サラ・Y・メイソン、ヴィクター・ヒアマン –『若草物語』
ソニア・レヴィン、ポール・グリーン –『あめりか祭』
ロバート・リスキン –『一日だけの淑女』
撮影賞
◎チャールズ・ラング –『戦場よさらば』
ジョージ・フォルシー –『維納の再会』
カール・ストラス –『暴君ネロ』
美術監督賞
◎ウィリアム・S・ダーリン –『大帝国行進曲』
ハンス・ドレイエル、ローランド・アンダーソン –『戦場よさらば』
セドリック・ギボンズ –『When Ladies Meet』
録音賞
◎フランクリン・ハンセン –『戦場よさらば』
ネイサン・レヴィンソン –『四十二番街』
ネイサン・レヴィンソン –『ゴールド・ディガース』
ネイサン・レヴィンソン –『仮面の米国』
助監督賞
◎チャールズ・バートン
チャールズ・ドリアン
フレッド・フォックス
ゴードン・ホリングゼッド
リック・ジェームス
デューイ・スターキー
ウィリアム・タンメル
アル・アレボーン
シッド・ブロート
オービル・O・ダル
パーシー・イカード
アーサー・ジェーコブソン
エドワード・キリー
ジョセフ・A・マックドノー
ウィリアム・J・ライター
フランク・ショー
ベン・シルベイ
ジョン・S・ウォーターズ
短編映画賞(コメディ)
◎『So This Is Harris!』– RKO
『Mister Mugg』– ユニバーサル・ピクチャーズ
『A Preferred List』– RKO
短編映画賞(ノベルティ)
◎『Krakatoa』– エデュケーショナル・ピクチャーズ
『Menu』– ピート・スミス、MGM
『The Sea』– エデュケーショナル・ピクチャーズ
短編アニメ賞
◎『小豚物語』– ウォルト・ディズニー、ユナイテッド・アーティスツ
『Building a Building』– ウォルト・ディズニー、ユナイテッド・アーティスツ
『The Merry Old Soul』– ウォルター・ランツ、ユニバーサル・ピクチャーズ