会場:アンバサダーホテル
司会:コンラッド・ネーゲル
トーキー映画の成熟とともに、映画は単なる娯楽から、社会を映し出す鏡へと進化を遂げた。1930年11月5日、ロサンゼルスのアンバサダーホテルで開催された第3回アカデミー賞授賞式は、まさにその変革を象徴する一夜となった。映画芸術のさらなる深化を祝うだけでなく、映画が持つ社会への洞察力を世界に知らしめる機会でもあったのだ。
この年のアカデミー賞では、脚本賞が脚色賞と原作賞に分割され、映画における物語の重要性が改めて認識された。また、前年に新設された録音賞は、トーキー映画の普及とともにその重要性を増し、映画の音響技術の発展を促進した。これらの改訂は、映画がより多角的で深みのある表現へと進化していることを如実に示していた。
栄誉の頂点に立ったのは、作品賞と監督賞を受賞した『西部戦線異状なし』だ。エーリヒ・マリア・レマルクの同名小説を原作とするこの作品は、第一次世界大戦の悲惨さと虚無を容赦なく描き出し、反戦映画の金字塔として高く評価されている。戦争の愚かさを訴えるその力強いメッセージは、世界中の観客の心に深く刻まれた。
主演女優賞を受賞したノーマ・シアラーは、トーキー映画へのスムーズな移行を果たし、その演技力と美貌で観客を魅了した。彼女はその後も数々の名作に出演し、ハリウッド黄金時代を代表する女優としての地位を不動のものとした。
第3回アカデミー賞は、映画が単なる娯楽を超えて、社会問題を提起し、人々の意識に訴えかける力を持つことを示した。それは、映画が持つ社会的影響力の大きさを改めて認識させ、映画芸術のさらなる可能性を示唆するものであった。映画の進化を祝うこの華やかな夜は、映画史に深く刻まれ、その後の映画界の発展に大きな影響を与え続けることだろう。
作品賞
◎『西部戦線異状なし』
『ビッグ・ハウス』
『Disraeli』
『結婚双紙』
『ラヴ・パレイド』
監督賞
◎クラレンス・ブラウン –『アンナ・クリスティ』
クラレンス・ブラウン –『ロマンス』
ロバート・Z・レナード –『結婚双紙』
エルンスト・ルビッチ –『ラヴ・パレイド』
キング・ヴィダー –『ハレルヤ』
主演男優賞
◎ジョージ・アーリス –『Disraeli』
ジョージ・アーリス –『The Green Goddess』
ウォーレス・ビアリー –『ビッグ・ハウス』
モーリス・シュヴァリエ –『チゥインガム行進曲』
モーリス・シュヴァリエ –『ラヴ・パレイド』
ロナルド・コールマン –『ブルドッグ・ドラモンド』
ロナルド・コールマン –『曳かれ行く男』
ローレンス・ティベット –『悪漢の唄』
主演女優賞
◎ノーマ・シアラー –『結婚双紙』
ナンシー・キャロル –『悪魔の日曜日』
ルース・チャタートン –『サラアとその子』
グレタ・ガルボ –『アンナ・クリスティ』
グレタ・ガルボ –『ロマンス』
ノーマ・シアラー –『Their Own Desire』
グロリア・スワンソン –『トレスパッサー』
脚本賞
◎フランシス・マリオン –『ビッグ・ハウス』
ジョージ・アボット、マクスウェル・アンダーソン、デル・アンドリュース –『西部戦線異状なし』
ハワード・エスタブルック –『命を賭ける男』
ジュリアン・ジョセフソン –『Disraeli』
ジョン・ミーハン –『結婚双紙』
録音賞
◎ダグラス・シアラー –『ビッグ・ハウス』
ジョージ・グローブス –『The Song of the Flame』
フランクリン・ハンセン –『ラヴ・パレイド』
オスカー・ランガーストーム –『怪紳士』
ジョン・E・トリビイ –『The Case of Sergeant Grischa』
撮影賞
◎ジョセフ・T・ラッカー、ウィラード・ヴァンダーヴィーア –『バード少将南極探険』
ウィリアム・H・ダニエルズ –『アンナ・クリスティ』
アーサー・エディソン –『西部戦線異状なし』
ガエタノ・ゴーディオ、ハリー・ペリー –『地獄の天使』
ヴィクター・ミルナー –『ラヴ・パレイド』
美術監督賞
◎ハーマン・ロス –『キング・オブ・ジャズ』
ハンス・ドレイエ –『ラヴ・パレイド』
ハンス・ドレイエ –『放浪の王者』
ウィリアム・キャメロン・メンジース –『ブルドッグ・ドラモンド』
ジャック・オーキイ –『恋の花園』