第1回アカデミー賞(1929年)

 

会場:ハリウッド・ルーズベルト・ホテル
司会:ダグラス・フェアバンクス

1929年5月16日、ハリウッド・ルーズベルト・ホテル。華やかな雰囲気の中、映画という芸術が新たな1ページを刻む夜が開幕した。映画産業の黎明期におけるささやかながらも意義深い祝宴、第1回アカデミー賞授賞式。黎明期の映画界が、その輝かしい未来を予感させる一夜となった。

授賞式では、作品賞、監督賞(ドラマ部門・コメディ部門)、主演男優賞・女優賞、脚本賞、撮影賞、美術監督賞、技術効果賞といった主要な部門に加え、第1回のみの「芸術作品賞」、そして映画芸術の発展に貢献した人物に贈られる名誉賞が用意された。

栄誉に輝いたのは、『つばさ』と『サンライズ』の2作品で、作品賞を分け合った。監督賞はフランク・ボーゼーギが『第七天国』でドラマ部門を、ルイス・マイルストンが『美人国二人行脚』でコメディ部門を受賞。主演男優賞はエミール・ヤニングスが『最後の命令』と『肉体の道』の演技により、主演女優賞はジャネット・ゲイナーが『第七天国』『街の天使』『サンライズ』の演技により受賞した。脚本賞はベン・ヘクトが『暗黒街』で、撮影賞はチャールズ・ロッシャーとカール・ストラスが『サンライズ』で、美術監督賞はウィリアム・キャメロン・メンジースが『ダブ』と『テンペスト』で、技術効果賞はロイ・ポメロイが『つばさ』で受賞。ユニークで芸術的な作品賞は『サンライズ』が受賞し、名誉賞はワーナー・ブラザースとチャールズ・チャップリンに贈られた。これらの受賞者たちは、映画という芸術の可能性を切り拓き、その未来を明るく照らした先駆者と言えるだろう。

第1回アカデミー賞は、映画産業がまだ揺籃期にあった時代に開催された。トーキー映画の登場、ハリウッドの隆盛、そして世界恐慌の影。激動の時代の中で、アカデミー賞は映画という芸術の価値を認め、その発展を後押しする役割を果たした。中でも、『つばさ』と『サンライズ』は、映画史に燦然と輝く名作として、その名を刻んでいる。『つばさ』は革新的な特殊効果と感動的なドラマで観客を魅了し、『サンライズ』は美しい映像と深い人間ドラマで時代を超えて人々の心を揺さぶる。

第1回アカデミー賞は、映画という芸術が単なる娯楽を超え、人間の感情や社会を映し出す鏡となり得ることを示した。それは映画の黄金時代への序章であり、未来の映画製作者たちに大きな夢と希望を与えた。映画産業の黎明期における記念碑的な出来事であった第1回アカデミー賞は、映画芸術への敬意と情熱を表明する場であり、映画という芸術の可能性を世界に示す機会でもあった。それは映画の黄金時代への扉を開き、その後の映画史に大きな影響を与え、映画という芸術が時代を超えて人々の心を動かし、社会を豊かにする力を秘めていることを証明したのだ。

作品賞

◎『つばさ』
『暴力団』
『第七天国』

芸術作品賞

◎『サンライズ』
『チャング』
『群衆』

コメディ監督賞

◎ルイス・マイルストン -『美人国二人行脚』
テッド・ワイルド -『ロイドのスピーディー』

ドラマ監督賞

◎フランク・ボーゼイジ -『第七天国』
キング・ヴィダー -『群衆』
ハーバート・ブレノン -『ソレルと其の子』

主演男優賞

◎エミール・ヤニングス -『最後の命令』『肉体の道』
リチャード・バーセルメス -『獄中日記』『熱血拳闘手』

主演女優賞

◎ジャネット・ゲイナー -『第七天国』『街の天使』『サンライズ』
グロリア・スワンソン -『港の女』
ルイーズ・ドレッサー -『老番人』

原案賞

◎ベン・ヘクト -『暗黒街』
ラホス・ビロ -『最後の命令』

脚色賞

◎ベンジャミン・グレイザー -『第七天国』
アンソニー・コールドウェイ -『祖国の叫び』
アルフレッド・A・コーン -『ジャズ・シンガー』

撮影賞

◎チャールズ・ロッシャー、カール・ストラス -『サンライズ』
ジョージ・バーンズ -『悪魔の踊子』
ジョージ・バーンズ -『魔炎』
ジョージ・バーンズ -『港の女』

美術賞

◎ウィリアム・キャメロン -『赤い鳩』『テンペスト』
ハリー・オリヴァー -『第七天国』
ロフス・グリーゼ -『サンライズ』

技術効果賞

◎ロイ・ポメロイ -『つばさ』
ラルフ・ハメラス
ニュージャント・スローター

脚本字幕賞

◎ジョセフ・ファーナム
ジョージ・マリオン・Jr
ジェラルド・ダフィ -『トロイ情史』

名誉賞

チャールズ・チャップリン
ワーナー・ブラザース

 

error: 右クリックはできません。